現在、韓国の国会が、「テロ防止法案」の採決をめぐって23日午後7時から野党が無制限討論による長時間演説、いわゆる「フィリバスター」のリレーに突入し、4日目ですでに50時間以上連続で演説を続けるという異常事態となっています。

145626306354_20160224


まとめ記事 :http://matome.naver.jp/odai/2145633696117041701

これまで演壇に登ったのは野党「共に民主党」、「正義の党」、「国民の党」の議員9人で、それぞれ5時間34分、1時間50分、10時間18分、9時間29分、5時間20分、5時間21分、7時間3分、4時間46分の長時間演説をしながらリレーで時間をかせぎ、この法案を時間切れの廃案に持ち込もうとしています。廃案までの時間はあと14日あり、それまで演説を続ける必要があります。そのために野党は全議員がこのフィリバスターを行う構えです。

テロ防止法案は、情報機関の国家情報院(国情院)に、テロに関連した疑いのある人物の通信傍受や出入国制限、金融取引制限などを行う権限を持たせる内容を含んでいます。野党側は、「テロとは全く関係のない反核活動家までをテロ危険人物と見ている状況で、国家情報院の恣意的な判断が一般市民に向かわないとどうして確信できるか」と声を高め、国情院がこうした権限を持てば、政府に批判的な人物の監視に悪用する恐れがあるとして反対しているものです。
さあ、どこかで聞いたような法案ではないでしょうか。

10時間18分の演説をした殷秀美(ウンスミ)議員は、1990年代初めに非合法運動団体であった社労盟(南韓社会主義労働者同盟)の活動で逮捕され拷問を受け、6年間の獄中生活をした後、殷秀美金大中政権のとき特別赦免により復権し、その後大学院を出て学者となり、国会議員になった人です。

slide_479596_6559916_compressed

 
このように金大中政権が2,892人、盧武鉉政権は646人を赦免したということですが、逆に言えばそれまでにそれだけの数の人々が国家保安法違反という名前で捕まっていたということです。
彼らの復権後、盧武鉉政権は彼女ら中心人物を民主化運動有功者として再評価しました。
「テロ防止法案」と言いながら、その実は「国民監視法案」であるというのが野党の主張です。
朴槿恵政権のしようとしていることは、時計の針を民主化前へと戻そうとする動きにほかなりません。
野党の議員の必死の抵抗には打たれるものがあります。演説の中で、青年の問題にも言及しながら、生きる権利を保証するよう訴える姿には、国民に真剣に向き合っていることが感じられるようです。

しかし、韓国でこれだけ大問題になっているのにも関わらず、日本ではほとんど関心を持たれていないようです。
安保法案の際も初めの頃韓国ではそんな反応でしたが、Facebookなどでの日本の進歩派の人々の記事にもまったく上がってこないところを見ると、本当に話題になっていないようです。
現在の日本と非常に近い脈絡で、政権が国民の人権を大昔に押し戻そうとする流れが続いています。

法案をめぐる事情は以下の記事のとおりです。
=======
【ソウル聯合ニュース】韓国の国会で情報機関・国家情報院(国情院)の捜査権限拡大を柱とするテロ防止法案の成立を阻止するため、野党の国会議員らが長時間の演説で国会議事を引き延ばす「フィリバスター」(議事妨害)を続ける異例の事態が起きている。

 演説は23日午後7時過ぎから始まり、25日午後現在、7人目の正義党・金ジェ南(キム・ジェナム)議員が壇上に立っている。3人目に演説した最大野党・共に民主党の殷秀美(ウン・スミ)議員は24日午前2時半から同日午後0時48分まで10時間18分にわたり演説を行い、韓国国会史上最長の演説時間となった。

 これに対し、与党セヌリ党は「国会のまひ」と批判。北朝鮮のテロ脅威が高まっているとして、同法案の早期成立を求めている。

 同法案の争点は国情院に対し、テロ容疑者の捜査権や盗聴を認める内容を含んでいることだ。野党はテロの定義があいまいな上、国情院の職権乱用や人権侵害の懸念があるとして反対している。セヌリ党は国情院がテロ捜査権を行使する場合、首相を委員長とする国家テロ対策委員会に事前、または事後報告させることで、同委員会が国情院の捜査を監視、けん制できるとしている。

 与野党は23日、国会議員総選挙(4月13日投開票)の小選挙区の区割りをするための基準を決めた選挙法改正案を26日の本会議で可決させることで合意している。改正案を可決するためには野党側が演説を中止し、テロ防止法から成立させなければならず、野党側の出方が注目されている。
========(http://goo.gl/uo00WX)


演説の様子とこれまでの演説の要旨はここから見ることができます。
http://www.filibuster.today

今日25日の国会の様子を伝えるニュースはこちら。
韓国JTBCニュース
http://news.jtbc.joins.com/article/article.aspx?news_id=NB11180784&pDate=20160225


この件に関する日本語のニュース記事
東京新聞
http://www.tokyo-np.co.jp/article/world/list/201602/CK2016022502000124.html

西日本新聞
http://www.nishinippon.co.jp/nnp/world/article/226535

聯合ニュース
http://japanese.yonhapnews.co.kr/Politics2/2016/02/25/0900000000AJP20160225002800882.HTML

ハンギョレ新聞
http://japan.hani.co.kr/arti/politics/23415.html